アンプの動作方式 D級とA/B級、そして G/H級

実は一口に”アンプ”と言っても動作方式は一つではない。動作方式が異なると出力や効率や音質が違ってくる。
同じ動作方式でも素子(トランジスタかモスFETか)でも音が変わってくるし、回路構成や使用するコンデンサなどの材料でも音が変わってくる。スピーカーの音質も重要だ。
もちろん、アンプは大出力で、高音質で小型で安価な物が望ましいが、すべては実現できない。
問題は、どれを重要視するか。
ハーレーに搭載するアンプは車両に搭載するので、まず小型である事が要求される。しかも大出力も要求される。
その為、通常D級とよばれる動作方式の物が多い。
一方、家庭用のハイファイアンプは室内で静かな所で聞き、大きくても音質重視なので、A/B級で動作するアンプが多い。

A/B級動作アンプ

A/B級動作アンプA/B級動作(上の波形)では音声の波形の上側と下側を別々の素子(トランジスタやモスFET)でドライブするB級動作(下の波形)を改良したもの。
B級動作という比較的効率の良い動作方式があるが、効率よく出力を出せる反面、上側と下側の波形が交差する所でクロスオーバー歪が発生してしまう(緑の波形)。
AB級はB級動作の欠点を無くすためバイアスをかけて歪を取り除いている。上下ともリニアに波形が変化するので、ハイファイに向いている(上の黄色の波形)。

D級動作アンプ

D級動作アンプD級動作(左の波形)では高周波でスイッチングさせて出力をデジタルで制御する。周波数でデジタル波形の幅が変化する。 そして出力の前でローパスフィルターをかけて人間の耳に聞こえない 20Khz以上の高周波成分を除去しアナログに戻す。熱損失が少なく、効率が良い。

元々、音質よりも出力が重視される無線のアンプで採用されてきた方式だ。それが技術の進歩でスイッチング周波数を上げる事ができ、比較的高音質で設計できるようになりカーオーディオでもよく採用されるようになってきた。
特に小型で大出力が要求される場合には、AB級では熱損失が大きくて無理な為よく採用されている。
ただし、ローパスフィルタ部分で若干音が変質してしまうので、音にウルサい人には”音質が・・・”となってしまうかも知れないが、一般的には走行中に聞いてそれほど気になるような事は無い。

G/H級動作アンプ

G/H級動作アンプD級動作よりもっと澄んだ音を出したい、とい事で開発されたのがA/B級を改良した G/H級動作。
G/H級では音の上下を別々の素子で増幅するA/B級の動作をそのままに、出力の大きさで素子にかける電圧を制御している。
上側の波形はA/B級動作で、赤い部分が熱損失となる。この部分が大きいと大型のトランジスタを大きな放熱板に付けなくてはならず、小型化が難しい、コストが高い、といった問題が出てくる。

G/H級動作(下の波形)では出力の低い時には電圧を下げるので、赤い熱損失部分が少なくなる。その分小型化できコストも下げる事ができる。
メーカーによりポリシーが異なり、すべての機種にD級を採用しているメーカーと、上級にはAB級、中級にはGH級、そして普及モデルにはD級と使いわけているメーカーもある。

コストと、音質、そして必要な出力を考えてアンプを選びたい。
繰り返すが、全部は無理。”一般的”以上の音質を求めるならそれなりの出費が必要になってくる。