ハーレーのツインカム・エンジン

ダイナおよびソフテイル、ツーリングモデルはすべて”ツインカム・エンジン”を採用している。
普通のエンジンはエンジン本体とミッションが合体した一体式だが、ハーレーはミッションが別でエンジンからはその動力をプライマリーと呼ばれる部分からクラッチを介してミッションに繋がっている。
したがって、エンジンとミッションはバラせる構造になっておりミッションだけ交換するというようなカスタムも可能だ。
分割式の方がコストがかかるが、ハーレーはかたくなにこの方式を守っている。
もちろん通常のエンジンと同様にシリンダー部を交換してボアアップも可能だ。

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クランク軸の出力はエンジン左側のプライマリー出力から後方のクラッチを介してミッションに動力を伝える。
この部分にはプライマリーオイルが入る。
ハーレーではエンジンオイルと、プライマリーオイルとミッションオイルとすべて分かれており、オイルも別々に(それぞれ用の粘度に合わせて)入れる。
このプライマリー部分はチェーンで駆動しているが、幅広のベルトを使用したオープンプライマリー(ベルトドライブ)といったパーツもある。

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エンジン右側の下部にはカムがあり、リフターという超軽量な棒(プッシュロッド)でエンジン上部のロッカーアームを押してバルブを駆動している。
リフターはエンジンオイルの通り道でもあり、とても合理的な造りをしている。
バルブがエンジン上部にあり、カムは下にあるのでOHV(オーバーヘッドバルブ)エンジンと呼ぶ。

また、プッシュロッドカバーパーツもあり、エンジンをカスタム感ある外観に仕上げる事も出来る。

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エンジン右側のカムカバーにはクランク軸からカムに駆動するチェーンとスプロケットが見える。
この部分を外すと内側にカムがある。
このチェーンをギアに変えてより正確なカム駆動を実現したギアカムというパーツもある。

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カムは前後に2つある。”ツインカム・エンジン”の由来でもある。
それぞれに吸気用と排気用の2つのカム山がある。
このカムを変えてさらにハイパワーを目指すキットもある。
上で紹介した「ギアドライブパーツ」にもセットで付属する。

ちなみに国産車で言う「ツインカム」とは別物なので注意。
通常ツインカムエンジンとは1つのシリンダーに対し2つのカムシャフトがある事を言うが、ハーレーでは前後2つのシリンダーに対して2つある事でツインカムとなっている。
通常のエンジン的には、ハーレーのツインカムはワンカムエンジンだ。

ツインカムエンジンでは2006年までキャブレターが使用されていた。
しかし、年々厳しくなる排ガス規制や様々な条件に柔軟に対応できるインジェクション(燃料噴射)に移行していった。

それに伴い、ノーマル状態では燃料が薄めの設定になってしまった。
なのできちんと燃調(セッティング)をする事で、よりハーレーらしいドコドコとした乗り味になり、エンジンの負担も減るので燃調する事をぜひオススメする。
キャブ車であればジェット類の交換だけでもかなり変化を感じられるし、インジェクションに比べ難易度も低い。

インジェクション車にはフューエルポンプが搭載され、ECM(車載コンピュータ)が噴射量を計算する。
当初はO2センサーを使用せず、ECMのマップで噴射するのみだったが、その後O2センサーが搭載され、より細かく調整する事でパワーと燃費とドライバビリティが改善されていった。

インジェクション車も当然、燃調(セッティング)した方が良いが専用のデバイスやある程度の知識が必要になり、若干ハードルが上がってしまった感がある。

詳細は下記で紹介する。

その後、アクセルワイヤーを使用せず、配線で信号を伝えてスロットルモーターを捻る、TBW(スロットルバイワイヤー) すなわち電子制御スロットル方式に変わっていく。
電子制御スロットル方式ではハンドルの適合が変わるが、アダプターを付ければ電子制御用はケーブルスロットル車にも使用出来る。

ECM(車載コンピューター)はインジェクション車に必須。回転数とスロットル開度に応じて必要な燃料噴射量を計算している。
このデータ(マップ)を変更するのが燃調だ。
マップはマフラーやエアクリーナーを交換すると大きくずれてしまう。
ノーマルより吸排気の量が多くなり多くのエアーがシリンダーに吸い込まれ燃料が薄くなってしまう。
薄くなるとパワーダウンしたり、エンジンの熱量が増えたり、アフターファイアーが出たりする。
燃調状態はプラグを見る事でおおよその検討はつける事が出来る。写真の状態だとプラグ先端が白く焼けているので、上(高回転域)が薄い状態だ。
こうなっていたら燃調する前に交換をオススメする。

EMCのデータを書き換えるインジェクションチューニング(フラッシュチューン)がハーレーでは大きな流れになっていて、他のバイクや自動車とは比較にならないほど豊富なインジェクションチューニングのデバイスが用意されている。
ツインカム車のカスタムは外装や機能パーツだけにとどまらず、マフラーやエアクリーナー、そしてインジェクションチューニングまで幅広くいじれる楽しみがある。

専用のデバイスを必要とするので、キャブ車に比べ若干難易度は上がるがハーレーらしい乗り味を求めチャレンジしてほしい。