ハーレーではマフラーを交換してハーレーらしい音を楽しんだり、エアクリーナーをハイフロータイプに交換する人も多い。ノーマル状態で排気ガス規制と燃費を考慮したセッティングになっているが、その バランスが崩れてしまう。
キャブ車ではマニフォールドを通過する空気でガソリンが吸い出されていたので、マフラーやエアクリーナーを交換して多くの空気が吸い込まれると燃料も増える。ジェットを交換すれば燃料の量を調整できた。
しかし、インジェクション車では車載コンピュータ(ECM)の中にあるマップで回転数やスロットルポジションによる燃料噴射量が決まっている。マフラーやエアクリーナーを交換するとより多くの空気がエンジンに入ってしまうので、そのままでは燃調が薄い現象(エンジンが熱い、オーバーヒートぎみになる、アフターファイヤー(エンジンブレーキをかけた時にマフラーでパンパンと鳴る)が出る、トルクが出ない、等)が出てしまう。ひどくなるとノッキングが出てエンジンにも良くない。
この状態ではパワーやトルクが出ないだけでなく、排気ガスや燃費にも良くない状態だ。
インジェクションチューニングを行うと、吸気や排気の状況に合わせた燃料噴射量を調節するインジェクションチューニングを行えるので、上記の問題を解決したり、増加した空気吸入量に燃料噴射量を合わせる事でよりパワーを出す事ができる。
ハーレーのインジェクションチューニングにはいくつかの方法がある。
これだけインジェクションチューニングの方法が色々あるのはハーレーならでは。
ハーレーダビッドソンがスクリーミンイーグルのスーパーチューナーで一般ユーザーにもPCを使用してECMのデータを書き込めるようにしたのが大きく貢献した。
ちなみに4輪車の世界ではマップをベンダーから送ってもらって書き込む方式はあるが、自分でマップを変更して書き込めるようなデバイスはほとんど存在しない。
ハーレーの車載コンピュータ(ECM)はシートの下か、サイドカバーの中か、エンジンの後ろのいずれかに搭載されている。
ハーレー用の代表的なインジェクションチューニングのデバイスには以下のような方式がある。
(1)フルコン
”フル・コンピューター”の略称。
燃料制御専用のコンピューターを車載コンピュータから交換し、O2センサーもワイドバンドに交換する方式。
ワイドバンドセンサーを使用するので、ノーマルのナローバンドに比べてパワーもトルクも段違いに感じる。
常時ワイドバンドセンサーでオートチューンで走行するので、下から上の回転域までいつもベストなセッティングで走れる。
性能的には一番高い。
(2)車載コンピュータ書き換え方式
ハーレーの車載コンピュータでは空燃比や空気充填率などのマップ(回転数とアクセル開度に応じた噴射量を制御)を内蔵しているが、4輪車によくあるROM交換を行わなくても、電気的に書き換えが可能な方式を取っている。
この書き換えを行うデバイスが販売されており、ハーレーではこの方式が現在は主流で様々なデバイスが利用できる。
パソコンが必須のスーパーチューナーや、液晶で行うパワービジョン、スマホで行える Fuelpak FP3など。
この方式の特徴は:
①ある回転数だけ濃くしたり、アクセルを捻った時に燃料を増量したり、アイドリング回転数を変えたり、進角度を変えたりと細かい所まで変更ができる。
②車載コンピュータの書き換えを行うので操作はやや複雑な部分もある。日本語マニュアルが用意されておりしっかりとサポートしてくれるショップから購入するか、あるいはカスタムショップなどに依頼する(ショップによってセッティング可能なデバイスが決まってくるので事前に確認すること)。
③ノーマルのナローバンドO2センサーを使用するので、フルエキ+ハイフローエアクリーナーなどノーマルから大きく吸気効率が変わるとセッティングが難しくなってくる(オートチューンでもなかなか合わない)。→ それでもやらないに比べると大きく改善される。最初にマフラーを選んでマップを書き換えるので、ノーマルより大きく改善される。
(3)サブコン方式
車載コンピューターの外側に燃料の調整を行うデバイスを追加して制御する。燃料の補正はサブコンで行う。
この方式の特徴は:
①取り付ければ動作する。データを少し打ち込むかスクリューを廻すだけでセッティングができる。
②ある特定部分の回転域だけセッティングを変えたいとか、アイドリングを変えたいとか、そういう細かい変更はできない。
③デバイス内に補正データをデジタルで持つ方式と、スクリューで低・中・高回転域のそれぞれを調整できる方式などがある。
(4)自動学習型サブコン
コネクタを差し込むだけで、あとは走行すれば自分で燃料の濃い・薄いを学習してくれるタイプ。
O2センサーのデータを読み込んで補正値を割り出し、燃料噴射量を調節する。
この方式の特徴は:
①取り付けれるだけで動作する。調整は何も必要ない。
②燃料の濃い・薄いしか調整しない。あとは何も変えれない。通常は他の部分は何も変える必要がないのでこれでOK。
③エンリッチナーと違って各回転域の補正値を割り出し保存するので、エンジンの回転数が変わってもすぐに補正された燃料噴射量になる。
(5)エンリッチナー
上記の自動学習型に近いが、これはO2センサーの電圧を少し変更する事でECMに燃料が薄いと認識させて補正される。
O2センサーとECMを接続するカプラーを外して接続する。
この方式の特徴は:
①取付が簡単でコストも安い
②ECMがO2センサーのデータを読み込む時しか効果が出ない。例えばアクセルを捻ると回転数が上昇してECMは内部のマップから必要な燃料噴射量を計算して噴射する。
その後も回転数が変わると新しくマップから読み込むので、O2センサーのデータを加味して計算しなおす状態にならないので効果が出ない。
効果は限定されるが通常走行時には効果を実感できる。
③いつも”薄い”とECMにデータを送って燃料を濃くしようとするので燃費が悪くなる事がある。
ちなみに、燃料噴射装置はインテーク(吸気)ポートに前後用の2個が装着されている。
エアクリーナーのバックプレートと呼ばれるプレートを外すと、写真のようにインテークマニホールドが見える。これが二股に分かれて前後の吸気ポートにつながっている。
この上側にインジェクターが装着されており、燃料を噴射している。
ハーレーではマフラーやエアクリーナーを交換する事も大きな楽しみになっている。
インジェクションチューニングを行うとパフォーマンスもレスポンスも調整できるので走る楽しみが大きくなる。